寄り道バザールさん主催、「偶然の宴」と「おお!すおうおおしま」企画会議に家族(妻と長男)で参加しました。森田真生さんの講演「偶然の宴」では世界の捉え方を学びました。日本の宗教と哲学を専門とするオハイオ州立大学、トーマス・カスリス名誉教授の考えによると、インティマシー(Intimacy)は、日本的な寄り合い、空気を読む関係性を重視する文化。インテグリティ(Integrity)は、西洋的なぶれない原理に基づき、合理的・論理的に判断する文化。
ロボットと人間の関係性を例にすると、日本的なインティマシーな文化からは、魂の宿るロボットが人間と寄り合う「鉄腕アトムやドラえもん」が生まれています。西洋的なインテグリティな文化からは、原理の異なりから人間と対立する「ターミネーターやマトリックス」が生まれています。人工知能(AI)の研究は、アメリカのダートマス大学から始まったそうですが、AIで人間の暮らしを豊かにする商品やサービスの開発が得意なのは日本だと思います。
イギリスの産業革命に端を発して、アダム・スミスの経済理論「見えざる手」が生まれ、ペリーの黒船来航から166年、太平洋戦争の終結から74年。そして、令和元年までにグローバル資本主義が世界を席巻して来ましたが、大きな行き詰まりを感じています。ですが実は、日本から次の社会のあり方をつくることができると思っています。
それは、日本的なインティマシーな文化と西洋的なインテグリティな文化が融け合う社会。森田真生さんが語られた、松尾芭蕉の俳句「古池や蛙飛びこむ水の音」のような、ことばの空気感で自然科学の原理を紡ぎ出すような社会だと思います。
「Think global, Act local」ではなく、「Think locally, act regionally, leverage globally(現地で考え、地域レベルで行動し、グローバルな仕組みを活用する)」という生き方、働き方こそが大切です。株式会社ジブンノオトの「ジブンの仕事で世界をワクワク」という教育理念を基にした教育を、日本から、周防大島から世界に伝えたいと思っています。
これまでの10年。私は「学校のうたげ化」に挑み続けて来ました。昨日、ジブンの仕事を抽象化できました。日本の寺子屋というインティマシーな教育文化は、戦後、GHQの教育改革により解体され、教育基本法が制定、学習指導要領が導入され、インテグリティな教育文化となりました。
「学校のうたげ化」とは、2020年度からスタートする新しい学習指導要領に通ずると考えています。文部科学省は、これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても生き抜ける「生きる力」を学校で育むと宣言しています。そのために学校は、保護者や地域の力で「社会に開かれた教育課程」を実現するとなっています。そして子どもたちの学びは進化します。
「学校のうたげ化」の中心になるのは、総合的な学習の時間を軸としたプロジェクト学習です。これまでの約10年、周防大島町で、ふるさとを教材化した起業家教育を実践して来ました。今年度からは、総合的な学習の時間だけでなく、国語や社会、技術等の複数の教科等の単元と連携し、授業時数の効率化と教育効果の向上を目指します。例えば、中学校の社会(公民分野)の「企業を通して経済を考えよう」、国語の「魅力的な提案をしよう-プレゼンテーションをする」、技術の「ディジタル作品の設計・制作」という単元は、起業家教育というプロジェクト学習との単元連携が可能だと考えています。
そして最も大切なことは、教科等の連携、地域との連携により、子どもたちの3つの「資質・能力」を伸ばすことです。(1)「学びに向かう力、人間性」、(2)「思考力、判断力、表現力」、(3)「知識及び技能」の3つです。これら、3つの「資質・能力」の向上を、ふるさとを教材化した起業家教育により実践することで、結果的に子どもたちはふるさとの当事者となり、ふるさとから出たとしても、自然とふるさとに帰り、ふるさとで活躍するのだと思います。そして生態系として、ふるさとに起業家が増え、地域経済が活性化され、ふるさとは持続可能になるのだと考えています。
起業家教育による「学校のうたげ化」が、持続可能なふるさとをつくると信じています。そして、森田真生さんとの無限分の一の出会いから学び、展開し、必然化させ、令和元年に本を出すという目標を実現したいと考えています。