株式会社ジブンノオト(周防大島)

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PROJECT
プロジェクト

福山市立福山中学校「個別最適な学び My探究」(広島県福山市)

2022.03.31

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福山市立福山中学校「個別最適な学び My探究」(広島県福山市)

100人100探

My探究とは、広島県教育委員会が目指す「個別最適な学び」を実現するための実証研究事業です。令和2年度から令和3年度の2年間で、株式会社ジブンノオトが事業を受託し、併設型中高一貫教育校の福山市立福山中学校を実証研究校とした、広島県教育委員会との協働事業です。

具体的には、全校生徒が、1人ひとりの興味や関心のある探究テーマを設定し、総合的な学習の時間を使い、数ヶ月の期間、継続的に探究活動に取り組みます。キャッチフレーズは「100人100探」です。このような、学校全体で個別の探究学習を通年で取り組む手法は、全国的にも非常に珍しく、これまでにはない探究学習の実証研究を進めています。学校現場に普及していない、My探究を、学校の教員だけで進めることは難しいため、広島県福山市出身で、学校の魅力化を専門とするヨシマ社・代表の余島純さんに、メインの探究学習コーディネーターに就任してもらいました。余島純さんはこれまでに、島根県立隠岐島前高校魅力化プロジェクトや、島根県での知夫里島教育魅力化プロジェクトなどを通じて、豊富なコーディネーター経験を持っており、福山中学校のMy探究を成功させるために必要不可欠な存在です。

探究すると稼ぎたくなる

My探究で実証しようとしていることは、2つあります。1つ目は、自己の興味や関心を起点とする継続的な探究活動により、コンピテンシーと呼ばれる、資質・能力は向上するのかどうか。2つ目は、資質・能力の高さと学力の高さは相関するのかどうかです。1年目を終了した2021年3月時点での実証研究の結論としては、自己の興味や関心に応じた継続的な探究活動により、設定した15の資質・能力は50%以上の生徒で伸びたので、1つ目の項目は実証できたと言えます。測定はAI分析ツール「AiGrow」を使用しました。

2つ目の資質・能力と学力の相関についても、資質・能力が平均以上のスコアを持っている生徒は、学力テスト(ベネッセ学力推移調査)の結果も高い傾向が見られたので、2つ目の項目も実証できたと言えます。それでは、福山中学校のMy探究と、自分の技で稼ぐための教育「起業育」が、どのようにつながるかを解説します。まず、福山中学校の生徒数は 学年で360人です。分野も手法も異なる最大360のプロジェクトが同時に進みます。My探究を実践する生徒はもちろん、教員、広島県教育委員会、福山市教育委員会、探究学習コーディネーターも経験したことがない、未知の探究学習に挑みました。

周防大島町立東和中学校(2021年3月末に閉校)のアントレは、株主を募集し、商品を販売し稼ぐ活動があるため、起業をダ イレクトに学習できます。ですが、生徒1人ひとりの興味や関心を深く探究できる活動は難しくなります。逆に、My探究は、自己の興味や関心を発見し掘り下げ、個別の活動を行うため、「自分の強み」や「自分の技」を強く意識することができます。興味深いことに、My探究のカリキュラムには、「稼ぐ」という活動を組み込んではいないのですが、全校生徒360人の数パーセントは、自然発生的に学校内でビジネスをはじめました。

例えば、社長になりたい生徒と、お菓子を手づくりしたい生徒たちがチームになり、放課後の職員室で、クッキーなどのお菓子を提供する探究活動をはじめました。まさしく、「社長」という無形の技と、「お菓子づくり」という技が融合し「CHOTO GROUP」という起業チームが立ち上がりました。ですが、放課後に職員室で手づくりのお菓子を提供する許可を、校長先生から得ることは簡単ではありません。生徒たちは、情熱的な生徒指導で数多の生徒を導いてきた、教頭先生に相談しました。校長先生を説得するためには、調理を行う家庭科室でのコロナ対策はもちろん、保健所への臨時出店届けを申請しない形式で、手づくりのお菓子を職員室で提供する方法を考えました。価格表示をしない寄付型で提供することにしました。企画書を何度も書き直し提出し、最終的には校長先生の許可 を得ることができました。

福山市立福山中学校「My探究」(広島県福山市)
福山中学校で開催された教員研修で、お菓子を寄付型で提供する起業チームのメンバーたち。

校内に広がるビジネス生態系

生徒たちは、「1企画書、2タスク、3スケジュール」がワンセットになった、「三種の探究神器」を学習したことで、My探究を効率良く進められました。「CHOTO GROUP」は、アンケートで先生が放課後に食べたいお菓子のニーズを把握し、月間スケジュー ルをつくり、定期的に提供することで、効率よく稼ぐことができました。このことに味をしめたのか、次は、福山市内のイベントに出店し稼ぎたいと思うようになります。そのためには、食品衛生法に基づく菓子製造業許可を取得した施設で、調理や加工をすることが必要です。探究学習コーディネーターの余島純さんにも相談しながら、福山駅前で営業許可取得済みのレンタルキッチンを見つけ、お菓子を製造し、イベントで販売することがで きました。

後日になり、「CHOTO GROUP」を軸に、学校内にビジネス生態系が広がっていることに気づきました。例えば、「CHOTO GROUP」には、お菓子をつくる「技」と、職員室などで販売する「技」はありますが、かわいいロゴをデザインする「技」はありません。なので、デザイン分野の探究活動をしていた生徒に、ロゴのデザインを発注しロゴ を制作してもらい、ロゴのデザイン料を数千円支払っていたのです。まさしくこれは、企業が新商品のロゴをデザイナーに制作依頼するのと同じ構造です。自己の興味や関心に基づくMy 探究だからこそ生まれたビジネス連携です。このように、探究活動を通じて稼ぎはじめるグループや生徒が現れたことで、学校の中庭で野菜づくりをしていたグループも、販売し稼ぐ活動に発展させました。子供は稼いではいけないという固定概念がなくなったことで、福山中学校はさらに風通しの良い学校になりました。

福山市立福山中学校「My探究」(広島県福山市)
発注され実際に納品したシール

探究を極めるとプロフェッショナル

この円グラフは、令和三年度一学期時点での全校生徒のMy探究の分類を表しています。多様な個性と同じように、とても多様な分類表になりました。スポーツ67人(18.76%)、 ものづくり53人(14.84%)、芸術(音楽)28人(7.84%)が分野トップ3という結果には、中学生たちの一般的な興味・関心の割合に比例しているように思いますが、お金、発電、将棋、eゲームなどは、My探究だからこその分野だなと思いました。この4つも、「1万時間の法則」で探究し続けると、稼げるプロフェッショナルな技能になりそうです。お金のプロフェッショナルなら、ファイナンシャルプランナーや公認会計士。発電のプロフェッショナルなら、再生可能エネルギーのエンジニア。将棋のプロフェッショナルなら、プロ棋士。eゲームのプロフェッショナルなら、eスポーツのプロ選手。どの職業も自分の「技」を磨き続けることで、社会的にも成功し稼ぐことができそうです。

福山市立福山中学校「My探究」(広島県福山市)
令和三年度一学期時点での全校生徒のMy探究の分類

My探究では、自分の興味や関心に基づき活動を進めることで、自分の個性や才能に気づき、自分の「技」を磨くことができます。 教科(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語)の学習を通じて養った知識や技能を、My探究で総合的に発揮することは、キャリア教育にもなる究極の「総合的な学習の時間」です。My探究を経験した中学生が、自分の技で稼ぐことに興味を持つことで、1人でも多くの起業家が学校で育つことを願っています。