株式会社ジブンノオト(アントレプレナーシップ教育・起業家教育・キャリア教育)

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PROJECT
プロジェクト

こども起業留学 in 瀬戸内のハワイ2025実施レポート

2026.02.09

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こども起業留学 in 瀬戸内のハワイ2025実施レポート

こども起業留学 in 瀬戸内のハワイ2025

—「自分の技で稼ぐ」を、子どもたちが“自分ごと”にする5日間—

プロジェクト概要


1. 「稼ぐ力」は、教室の外で開花する

私は、教育の現場でずっと引っかかってきたことがあります。キャリア教育の文脈で、「将来のために」と言いながら、将来に直結するはずの“稼ぐ”というテーマだけが、なぜか教室から一番遠い場所に置かれていることです。

稼ぐことは、単なる金儲けではありません。誰かの困りごとを見つけ、価値をつくり、相手に届け、対価を得て、続けられる形にする。つまり、社会とつながって生きる力そのものです。ジブンノオトが提唱する「起業」の定義はシンプルです。

起業とは、“自分の技で稼ぐ”ことです。派手な資金調達や、難しい横文字が先に来るものではありません。人に役立つ商品やサービスを自分でつくり、相手に届け、その対価としてお金が返ってくる。ここにこそ、人生と社会のリアルがあります。この“リアル”を、子どもたちに「分かる」ではなく「できる」にして手渡したい。その挑戦が、広島大学PSIと連携して実施した「こども起業留学 in 瀬戸内のハワイ」です。

舞台は、山口県周防大島町。日本一のハワイ移民史を持つ島で、子どもたちに渡したミッションは明快でした。「みかんを使って、オリジナルドリンクを開発し、販売せよ。」しかも、やるのは“ごっこ”ではありません。原価を計算し、値付けをし、売れなければ原因を考える。売れたなら、なぜ売れたのかを言語化する。起業家の目線で、現場に立つ。子どもたちは、短い時間の中で「稼ぐ力」を開花させることになります。


2. 子どもが“起業家の顔”になるまで

Day1(11月9日):広島で火をつける。「正解探し」をやめる練習

初日の会場は、広島大学の「きてみんさいラボ」。親子参加の事前学習です。ここで大切にしたのは、場の空気を“学校モード”のままにしないことでした。

子どもたちは賢く、言われたことはできます。でも起業は、テストのような「正解」がありません。自分の仮説を立て、試し、失敗し、立て直す。その入口に立ってもらう必要があります。だから私は、答えを教えません。そもそも、完璧な答えはないのですから。なので、問いを置きます。

答えが出なくていい。むしろ、答えがすぐには出ない問いを考えることが、アントレプレナーシップの入口だと思っています。この日は、カリキュラム理解、起業家の生き方、起業家取材のワークショップを行い、起業への関心を育みました。ここで親子が同じマインドセット(思考の土台)を持つことが、合宿の安心感にもつながります。

(Day1参加:子ども7名/保護者6名/学生スタッフ4名)


Day2(11月22日):周防大島へ。親元を離れた瞬間、表情が変わる

2週間後、舞台は周防大島へ移ります。集合は10時。合宿拠点は、学べる旅を届ける一棟貸しホテル「STAY at CANOA」。受講料にユニフォーム代も含めたのは、“旅の特別感”ではなく“チームの一体感”を最初からつくるためです。実際、同じ色の紫色のパーカーを着た子どもたちが並ぶと、空気が変わります。「同じ船に乗った」感覚が生まれるからです。

この日、子どもたちはハワイ文化の学習と、みかん収穫体験に入ります。ただの体験で終わらせないために、私はずっと、ファシリテーターとして、“問い”を出し続けます。

デジタルではなく、実在の素材に触れると、身近になり当事者意識が高まります。試作が始まると、今度は「好き」「おいしい」だけでは前に進みません。再現性、材料の量、見た目。商品とは、思いつきではなく設計だということを、子どもたちが体で覚え始めます。

(Day2〜参加:子ども8名/学生スタッフ4名)


Day3(11月23日):“原価”という壁が、子どもたちを起業家にする

Day3は現実との勝負です。ここで多くの子が、初めて「原価の壁」にぶつかります。

ここで登場するのが「原価」です。原価は、子どもたちの世界を一段階“現実側”へ引き寄せます。「おいしいものを作りたい」と「利益を出す」は、いつも仲良しではありません。そのギャップに向き合うこと自体が、起業家の学びです。

実施後のふりかえりでは、「原価・利益への目線」や「稼ぐ大変さの実感」が多く語られました。中でも印象的だったのが、ある子の言葉です。

「原価をもっと意識したらよかった。次はもっと工夫できると思う。」

この“次はもっと”が出るのは、本物の経験をした証拠です。自分たちで決めたからこそ悔しい。悔しいからこそ次がある。私は、この循環が、自分の技で稼ぐ人を育てる、起業育の核心だと思っています。


Day4(11月24日):販売本番。“代金”をいただいた瞬間、学びは現実になる

販売会当日。「準備→開催→ふりかえり」まで一気に走ります。販売は、優しさだけでは通用しません。声の大きさ、看板、導線、説明の仕方、会計、提供スピード。「代金」とは、お客様の時間と信頼を預かる媒介です。

そして、結果が出ました。

この「時給116円」は、教育的にはとてもリアルな数字です。子どもたちは、働くことの楽しさと厳しさを、感想ではなく計算結果として受け取ります。

同時に、彼らは働くことの意味にも触れます。「お金を稼ぐのは大変。でもみんなと売るのは楽しかった。」稼ぐことは闘いではなく、協働の歓びにもなりうる。この感覚を、小学生のうちに体感できることに価値があります。

この取り組みは、日本経済新聞(2026/1/27)でも紹介されました。記事では、子どもたちが考案したドリンクやフードを島民に販売し、合計100点を売ったこと、売上から材料費等を引いて1人あたり2,900円の稼ぎを手にしたことが取り上げられています。

私はその中で、起業家をこう表現しています。
「常に自己と向き合い続けるのが起業家」(日本経済新聞電子版より趣旨引用)

ジブンノオト公式サイトにも掲載


Day5(11月30日)発表。うまく話すより、「自分の言葉で語る」へ

最終日は、発表資料づくり、保護者懇談会、発表会・交流会。
ここで私が子どもたちに求めたのは、「上手にまとめること」ではありません。

経験を“学び”として残すには、言葉が必要です。そしてそれは、誰かに評価されるための言葉ではなく、「自分の次の行動になる言葉」であるべきです。

子どもたちは、保護者が見守るなか、全力で経験したことを伝えました。発表を終えた彼らの表情は、Day1とは別人のように見えました。失敗は挑戦の宝物です。起業は人を育てます。なぜなら、究極の「自分発見」の実験だから。自己対話や自己対峙の濃さが、起業の醍醐味だと私は改めて感じました。


3. アンケートから見えた変化:子どもと保護者、それぞれの「実感」

今回の成果は、売上だけでは測れません。ただ、数字が「やったことの輪郭」を作ってくれるのも事実です。そしてアンケートは、輪郭の内側にある“変化”を映してくれます。

子どもの変化(自由記述から)

保護者の学び(自由記述からの)

保護者のコメントを読んで、私は運営者として背筋が伸びました。
「親が教えにくいテーマを、体験で学べた」というコメントは、学校だけでは埋めにくい部分を補完できている証だからです。だからこそ、常に背筋をピンと張り、子どもたちや保護者のみなさまへアントレプレナーシップ教育を届けていきます。


4. 反省と改善:次年度の合言葉は「安心感」

良かった点としては、「事前案内が分かりやすく安心材料になった」「学校配布のチラシが参加判断を後押しした」という声がありました。一方で、改善点も明確です。

最大の改善点は、合宿中の子どもの様子が保護者に見えにくいことでした。「特に不満はない」という声が多い一方で、写真や動画などで一日の終わりに活動の様子を共有してほしいという要望がありました。

さらに、参加判断の段階で「詐欺だったらどうしよう」といった不安が一定あったという声もあり、学校からのチラシが信頼の決め手になったという指摘もありました。加えて、最終日の保護者の動き(集合・流れ)が分かりにくかったという課題もありました。合言葉は、「安心感」です。

教育事業は「良いことをしている」だけでは続きません。制度が変わり、人が変わり、参加者が変わる中で続けるには、常に進化できるかどうかです。


5. 次期ニーズ:単発で終わらせず、段階化し、継続する

次期ニーズとして強かったのは、今回の起業体験を単発で終わらせず、学年や経験に応じて段階的に深められる継続型プログラムへの期待です。

私は、令和5年度と合わせた開発・実施を通じて、この合宿型モデルが「満足度の高いプログラム」として確立できたと捉えています。運営ノウハウと教育効果の知見も、他地域への横展開や指導助言に活用できる水準まで蓄積できました。

次は、単発のイベントを卒業し、成長が積み上がるカリキュラムへ。
「小学生→中学生→高校生」へと、役割と難易度を上げながら「自分の技で稼ぐ」を深めていく教育事業に進化させたいと考えています。


6. 自治体・大学・企業のみなさまへ

アントレプレナーシップ教育は、教材だけでは成立しません。
「現場」「地域資源」「顧客」「失敗してもやり直せる安全な環境」が必要です。

本プロジェクトは、アントレプレナーシップ教育に関心のある自治体・大学・企業のみなさまと共同開発が可能です。

「稼ぐ」を教えるのではなく、「稼ぐ世界に子どもを連れていく」。
一人でも多くの子どもたちに、アントレプレナーシップ教育を届けたいと願っています。ご関心をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせからご連絡ください。